皆さんも、新聞や週刊誌などで取り上げられた、腰椎椎間板ヘルニアを注射で治す、という記事を読んだことがあるかもしれません。
約半年前から、「ヘルニコア」という注射薬が科研製薬から発売され、保険適応になっています。注射といっても、腕の静脈から入れる注射液ではなく、ヘルニアが発生した腰椎椎間板に、レントゲンを見ながら、長い針を刺して、この針から、注射液を椎間板内に注入するというものです。
この注射液の成分が椎間板のたんぱく質を変性させて、椎間板内の圧力を下げ、結果的に、この椎間板から飛び出した椎間板ヘルニアが神経を圧迫している圧力を低下させるというものです。
過去にも ヘルニア治療の注射液がありましたが、かなりの率でアレルギー反応が出て、ほとんど使用されませんでした。しかしこの「ヘルニコア」はアレルギー反応がほとんどなく、また副作用も少ないという点が謳い文句です。
ただこの注射液を使用するには、厳格な適応があり、椎間板ヘルニアのタイプをMRIで判断する必要があります。また使用する医師も脊椎脊髄外科専門医であることが最低限必要で、使用施設も厳格に決められております。
私は、日本脊椎脊髄外科専門医であることから、この注射液の使用が可能となっております。また私の手術提携病院である木島病院は、この注射液使用の許諾施設に認可されております。
当院での腰椎椎間板ヘルニア治療の選択肢がまた一つ増えました。いつでもご相談ください。
先週の脊椎手術は4件でした。腰椎変性すべり症に対して2椎間の除圧術、骨粗鬆症性腰椎圧迫骨折に対する経皮的後弯矯正術、腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡併用ヘルニア摘出術、腰部脊柱管狭窄症に対する除圧術の4件でした。
骨粗鬆症のため第3腰椎が骨折し、激痛のため寝返りが困難であった80歳代女性の患者さんは、経皮的後弯矯正術(BKP)により、術翌日からかなり腰痛が軽減されました。この術式は、非常に簡単で、また傷もほとんどなく、そのうえ、術直後から腰痛が著明に改善するという、すばらしい術式だと思います。すべての骨粗鬆症性の圧迫骨折がこの術式の適応ではありませんが、適応があれば、骨粗鬆症性圧迫骨折の激痛に悩む患者さんにとっては、福音になる術式と思います。
経皮的後弯形成術(BKP)は第2腰椎圧迫骨折患者で、受傷後約2か月経過しても腰痛が軽快せず、本人が手術を決断されました。術前日に入院され、当日は午後から全身麻酔下で手術を行いました。手術時間は40分程度で、傷は7㎜程度で終了しました。術翌日から、今までの腰痛が軽快しており、家族には「こんなに楽になるなら、もっと早く手術しておけばよかった」と言っていたそうです。術翌々日には退院されました。
なかなか忙しくてブログが更新できませんでした。
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背中から小さな風船付きの器具を挿入します。 | 椎体の中の風船を膨らませ、つぶれた骨を骨折前の形に戻します。 | 風船を抜くと、椎体内に空間ができます。空間を満たすようにセメントを充填します。 | 手術は1時間程度で終わり、骨セメントは手術中に固まります。 |
手術は手術室で全身麻酔下に行います。レントゲン透視装置で確認しながら、背中から管を「せぼね」内に進めます。そこに風船を挿入し(①)ふくらませることで、つぶれた骨を出来る限り復元します(②)。作られた空洞に専用の骨セメントを詰めます(③④)。手術の時間は通常1時間程度です。