先週の脊椎手術は再発性腰椎椎間板ヘルニア2例、腰部脊柱管狭窄症2例の合計4例の手術を行いました。
また日帰り手術として、手根管症候群2例、ばね指1例、軟部腫瘍摘出2例 の合計5件行いました。
私は腰椎椎間板ヘルニアの患者さんを手術する際に、必ず再発の可能性があることを説明しています。これはどんな名医が手術を行っても一定の頻度で必ず起こります。「私が行った腰椎椎間板ヘルニアの手術では再発が一例もない!!」と豪語する医師がいたとしたら、その医師は術後患者さんのフォローを十分に行っていないか、もしくは誇大表現をする癖があるか、のどちらかの可能性が高いと思います。
通常、椎間板ヘルニアは、椎間板が“変性”といって、組織内の水分量が減少してくることから始まります。その後、その変性した椎間板が“パンク”することにより椎間板内の軟骨成分が飛び出し、神経を圧迫して椎間板ヘルニアが生じます。我々脊椎外科医はその突出したヘルニア塊を手術で摘出するだけで、変性した椎間板を正常に戻すわけではありませんし、そんなことは現在の医学では不可能です。例えて言うなら、空気が抜け気味のタイヤ(変性した椎間板)が高速道路でパンク(椎間板ヘルニア発症)し、その“パンク”したタイヤを修理することが手術であり、空気が抜けたタイヤを新品に交換するわけではありません。したがって再度パンク(再発ヘルニア)する可能性があるというわけです。
これらのことを初回手術時に十分に説明していないと、患者さんの信頼を失うことになりかねませんし、またトラブルに発展する可能性があります。
先週の2件の再発性腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの初回手術は、技術的にも信頼のおける整形外科医により十分説明がなされて行なわれており、患者さん自身も再発の可能性を認識していたと思われます。
このように脊椎手術の術前のインフォームドコンセントはお互いに十分に納得するまで行うことが重要です。