2013-05-26 日記

今週の手術:頚椎椎間孔拡大術など8件の脊椎手術

 今週は8件の脊椎手術を行わせていただきました。腰部脊柱管狭窄症が4件、腰椎椎間板ヘルニアが2件、外側型腰椎椎間板ヘルニアが1件、頸椎症性神経根症が1件でした。

 

 頚椎症性神経根症は、頸椎が加齢現象にて頸椎が変形し、それに伴って、骨棘と呼ばれる骨のとげのようなものできて、それが頚神経を圧迫することにより発症します。症状は肩甲骨あたりから上腕・前腕にかけての痛みをしびれ感で、頸椎を後屈することにより症状が悪化します。治療は、消炎鎮痛剤投与と、各種注射治療で多くの患者さんが痛みが軽減しますが、それでも約1割程度の患者さんは、3か月を経過しても症状が改善しません。

 

  症状が激烈で、睡眠もろくにできないといった患者さんや、何か月も症状が持続している患者さんには手術を考慮すべきです。

 

  手術方法は一般的には頸椎前方固定術という、頚の前面を小切開して、骨棘をけずる手術が選択されます。しかしこの方法は、骨棘を削ったあとに、頸椎を、自分の骨や金属などで固定するということが必要で、この操作により、周術期、もしくは術後長期的にみて、様々な合併症が生じる可能性が10%程度あります。

 

  そこで私は頸椎椎間孔拡大術という方法を採用しています。この方法に、内視鏡手術用の開創器を併用することで、20㎜程度の切開で手術を行っています。この方法は頸椎の中の頚神経の通り道の一部を削ることで、神経を圧迫している骨棘を直接削らずに、神経の圧迫を解除する術式です。言ってみれば神経の迂回路を作成するような感じです。この術式の利点は、前方固定術と違い、頸椎を固定する必要がないため、合併症率が低いことと、術後の安静などがほとんど必要ないことが挙げられます。反面、神経を圧迫している骨棘を直接完全に削り取るわけでないことから、理論的にはやや、前方固定術と比較すると、その成績が劣る可能性があります。しかし、この点に関しては、私が以前、脊椎関連の学会で報告していますが、従来報告されている前方固定術とそん色ない成績が椎間孔拡大術でも得られています。

 

  今週のこの頸椎椎間孔拡大術を行った患者さんは、術直後から、術前あった上肢の痛みやしびれ感が軽減し、また握力も戻ってきたといって、喜んでおられます。