2012-10-14 椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニア患者さんの神経の奇形

 

 最近も脊椎手術をどんどん執刀させて頂いております。2週間前のブログ更新から先週まで、16件の脊椎手術を執刀いたしました。

そのなかで先週の腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの手術は大変でした。術前の画像診断から、椎間板ヘルニアの一部が骨化していることが判明していました。このような患者さんはたまにおられます。椎間板ヘルニアを長期間患っている患者さんでは、通常は軟骨成分のみの柔らかいヘルニア塊が、その一部が骨に変化し硬くなっていることがあります。また、青少年の時に椎間板ヘルニアに患っていた患者さんやスポーツ障害で腰を痛めた既往のある患者さんでも椎間板ヘルニアもしくは椎間板の辺縁の一部が骨化していることがあります。

 

 この患者さんも若いときから野球をしていたこと、当時から腰痛があったことから、スポーツ障害による腰椎辺縁の障害の遺残性骨化と考えられました。その旨を説明して、手術を行いました。手術を開始して顕微鏡で確認すると椎間板ヘルニア表面の骨化は想像通り認めましたが、それに加えて神経の走行が通常とは全く異なる走行をしていました。このようなことも稀ですがあります。通常は顕微鏡で覗いた椎間板周囲には一本しか神経が存在しませんが、奇形のため2本の神経が存在することがあります。この場合には、あるはずもないところに神経が存在していることから、その神経を神経と思わずに切断してしまったということになりかねません。私は脊椎の手術では全例に顕微鏡、もしくは拡大鏡を用いているため、これらの神経奇形の患者さんに対しても、安全に手術を完遂することができます。この患者さんでは2本の神経に注意しながら、骨化を削除し、またヘルニア塊を取り除きました。術後下肢痛が改善して、喜んでおられました。