最近めっきり朝晩が涼しくなってきました。いつの間にか秋になっていたようです。今年は週末になると天気が悪く、いつもはこの時期に北アルプスに一泊二日の登山に出かけるのですが、今年は行けませんでした。今年は兼六園周辺の街路樹の紅葉を楽しみたいと思っています。
先月は16件の全身麻酔下での手術を行いました。内訳は顕微鏡視下(内視鏡視下)椎間板ヘルニア摘出術4件、顕微鏡視下椎弓切除術6件、腰椎椎間孔狭窄1例、胸椎黄色靭帯骨化症に対する除圧術1件、経皮的後弯矯正術3件、人工膝関節置換術1件 です。
その中でも腰椎椎間孔狭窄の患者さんは診断にかなり難渋しました。
私が7年前に腰椎手術をした患者さんでしたが、ある日、突然、左下肢に激痛が走り、全く体動困難となって、救急車にて総合病院に担ぎ込まれました。担当医は腰椎由来の神経痛と判断し、腰椎MRIなどの検査をしましたが、明らかな異常は腰椎に見つからなかったようです。そのため外来通院で鎮痛剤投与や注射加療などで治療することとなりました。
しかし激痛は全く軽減せず、依然として歩行困難であったことから、当院に来院されました。来院時にはまともに歩行はできない状態で、診察室でも椅子に座ることも困難で、ベットに横になりながらの診察となりました。
左下肢にしびれ感を伴う激痛であることから、やはり腰椎疾患が一番考えられるため、当院でも腰椎MRIを撮影しました。しかし明らかな異常は見つかりません。そこで痛みが走る下肢の部位としびれ感の範囲が、鼠径部から膝周囲であり第4腰神経の支配領域に一致していることから、この神経の障害の可能性が高いと考え、レントゲン透視下に左第4腰神経にブロック注射を行いました。すると、数分後には、もののみごとに下肢痛は劇的に改善し、スタスタと診察室を歩けるようになりました。これには患者さんや奥さんもびっくりされていました。
この結果から、やはり左第4腰神経に何らかの障害が生じていると確信しました。残念ながらブロック注射の効果は数時間しか持続せず、すぐに元の激痛が再燃してきました。そこで、患者さんと相談して、左第4腰神経を障害するなんらかの病変がある可能性が高いことから、この神経を徹底的に除圧する手術を計画しました。
手術は、顕微鏡視下に外側開窓という手術アプローチで左第4腰神経を確認することにしました。靭帯や骨成分を部分的に切除して、ようやく左第4腰神経を確認しました。しかし、明らかな異常は認めません。正直、焦りました。しかし術前診断を信じて、さらに神経を追っていくと、ありました!!。 神経の裏側に、本当に小さい椎間板ヘルニアが!!。これが神経に食い込んで、神経は、痛々しそうにくびれています。これを顕微鏡視下に注意深く切除すると、神経はようやく膨らんで来ました。術後、患者さんの左下肢の激痛は全く無くなり、手術をして本当に良かったと言って大変喜んでおられました。
手術のあとに、術前のMRIを再確認しましたが、そのような眼でみると、左第4腰神経の外側に小さいヘルニアがある様にも見えますが、なかなか自信をもって診断はできないくらいの所見でした。
この患者さんは私を信頼して手術を決断して頂いたわけですが、私自身もその信頼を裏切ることのないように、日々患者さんの痛みを少しでも緩和できるようにベストを尽くしていきたいと思っています。